淋しがりやの足跡
洗濯物だけ手早く取りこんで。
リビングのソファーに腰かけて、ノートを開いた。
『時子へ』
「……時子だって。普段は名前でなんて呼ばないくせにね」
思わず笑ってしまった。
だけど、嬉しい。
『交換ノートの記念すべき1ページ目です。
病室でのひとりきりの時間は退屈ですが、君との交換ノートのおかげで、楽しい時間に変わります。
私も好きなことを書くので、君も自由にページを埋めてください』
史郎さんの字。
角張った、きれいな読みやすい字。
普段は「オレ」って言うけれど、ノートの中だと改まって「私」になるのね。
「史郎さんらしいわね」
ひとり呟いて、私は続きを読む。
『そういえば君は知らないでしょう。
この病室、早朝にはいつもスズメがくるんです。
窓辺にほんの少しの間居て、しばらくじっと私を見ています。
その姿が、とても愛らしいです。