淋しがりやの足跡

洗濯物だけ手早く取りこんで。

リビングのソファーに腰かけて、ノートを開いた。



『時子へ』



「……時子だって。普段は名前でなんて呼ばないくせにね」



思わず笑ってしまった。

だけど、嬉しい。



『交換ノートの記念すべき1ページ目です。

病室でのひとりきりの時間は退屈ですが、君との交換ノートのおかげで、楽しい時間に変わります。

私も好きなことを書くので、君も自由にページを埋めてください』



史郎さんの字。

角張った、きれいな読みやすい字。

普段は「オレ」って言うけれど、ノートの中だと改まって「私」になるのね。



「史郎さんらしいわね」



ひとり呟いて、私は続きを読む。



『そういえば君は知らないでしょう。

この病室、早朝にはいつもスズメがくるんです。

窓辺にほんの少しの間居て、しばらくじっと私を見ています。

その姿が、とても愛らしいです。


< 15 / 43 >

この作品をシェア

pagetop