淋しがりやの足跡
第2章
第1話
『史郎さんへ
今日は暖かくて、セーターを着たら暑く感じました。
カレンダーを見ると、そういえばひな祭りだったことを思い出し、史郎さんのお見舞いの帰りにひなあられだけを買うつもりでいます。
もう何年もひな人形を飾れていませんが、ひなあられだけは毎年食べているように思います。
時子より』
ノートを交換するようになって。
こんなふうに、その日の日記のようなものを何度か書いた。
いつの間にか私が書いた内容に、史郎さんが返事をくれるというスタイルになっている。
『自由にページを埋めてください』と、史郎さんは言ったけれど。
「こんな内容でいいのかしら?」
自分の書いたページを読み返すと、幼い子どもの日記みたい。
小学生の頃、担任の先生に提出していた宿題の日記を思い出してしまう。
ふと懐かしい気持ちになったけれど。
時計を見ると、そろそろ家を出る時間。
私は急いで身支度をする。