淋しがりやの足跡
市民病院へ着く。
史郎さんの病室の前で、見覚えのある背中を見つけた。
「草ちゃん、来てくれたの?」
声をかけると、孫の草一は振り返ってニイッと笑った。
その笑顔が若い頃の史郎さんと重なる。
「今日、学校は?」
「休んだ。おじいちゃんに会いたくて」
「あら、お母さんは知っているの?」
草一は頷く。
「どうしても会いたいって言って休んだ。母さんは『あら、そう』って」
受験日も近いのに、本当に大丈夫?と、言いかけてやめた。
史郎さんがまだ元気そうにしている今、孫達にも会ってほしい。
つらく苦しんでいる姿より。
元気に笑っている史郎さんを。
自分達のおじいちゃんとして、覚えておいてほしい。
「史郎さん、草ちゃんが会いに来てくれたわよ」
病室に先に入って史郎さんに伝え、草一に手招きした。
「おじいちゃん、こんにちは」
草一は軽く頭を下げてから、史郎さんのベッドのそばに寄る。