淋しがりやの足跡
どう言おうか考えていたら、史郎さんが、
「秘密のノート」
と、短く答えた。
草一が何それ、と興味津々な瞳を私達に向ける。
「おじいちゃんとおばあちゃんの交換ノートだよ」
史郎さんは笑顔でこう続けた。
「おじいちゃんがいなくなったら、読んでよし!」
帰り道。
みんな黙って、ただひたすら歩いていた。
沈黙を破ったのは、百花。
「……おばあちゃん」
「どうしたの?」
「あたし、もうひとつできた。将来の夢」
百花は立ち止まり、遠くに見える市民病院を振り返る。
「おじいちゃんみたいな人と、結婚する。それでおばあちゃんみたいに大事にされて、私も相手を大事にしたい」
またそんなことを言って、と言いかけた時。
草一も、
「わかる。オレもいつか大事な人と交換ノートをしたい」
と、真面目な顔をする。
私はそんな孫達を見て、笑ってしまった。