淋しがりやの足跡
第2話
『史郎さんへ
庭の沈丁花が見事に咲いています。
春が来たんだな、と実感します。
いつだったか正代が沈丁花の花言葉を教えてくれたのですが、時が経った今ではすっかり忘れてしまいました。
こういう時は忘れっぽくなったことを、残念に思います。
でも昔のことはよく覚えています、不思議ですね。
例えば史郎さんに初めて貰った花束。
原っぱに咲いているたんぽぽにリボンをつけた花束でしたね。
しばらく部屋に飾っていました。
史郎さんがたんぽぽを摘んでいる姿を想像すると、あの時も今も、心にあたたかいぬくもりを感じます。
今でも道でたんぽぽを見かけると、あの花束を思い出します。
時子より』
『時子へ
携帯電話を使って、インターネットで沈丁花の花言葉を調べてみました。
「栄光」や「勝利」などの他に、「不滅」と書いてあるページも見つけました。
正代は一時期、花言葉に詳しかったですね。