淋しがりやの足跡
「え?」
「もう来てくれなくていいんだ」
史郎さんはやせた体で、再び苦しそうに咳をした。
「史郎さん、大丈夫なの!?今、看護師さんを……」
ベッドのそばにあるブザーを押そうとすると史郎さんが、
「呼ばなくてもいい」
と、咳をしながら言った。
「でも」
「こんなに弱るなんて、我ながら情けないよ」
「そんなことない!史郎さんは情けなくないっ」
私の言葉に史郎さんは力なく笑った。
その笑った顔が。
まるで知らない人のようで。
(……泣かない。私は、泣かないんだから)
あふれてくる涙を追い払うように。
私は懸命に上を向いた。
家に帰ると、洗濯物を取りこんだ。
ぼんやりしてしまって。
取りこんだ洗濯物の山を見つめて思ったの。
(いつの間にこんなに少なくなったのかしら、洗濯物)
私のものと、病室から持ち帰った史郎さんのものが、ほんの少し。