淋しがりやの足跡
第2話
市民病院。
史郎さんの病室。
史郎さんはまた、高熱をだした。
「熱、なかなか下がらないわね」
行恵が不安そうに私を見る。
「そうね、少しでも下がるといいんだけど」
私は行恵の肩をさすった。
史郎さん……。
ついこの間まで一緒に笑っていたのに。
今ではこんなに苦しそうに眠っている。
「父さん、大丈夫よね?だってまだ3月よ?夏まではまだまだ時間があるものね?」
「……」
「ねぇ、母さんっ」
何も言わない私に、行恵は焦ったそうな顔をした。
その顔を見て、小さな子どもの頃と変わらないな、と思った。
どんなふうに返事をすればいいんだろう。
大丈夫よ、と勇気づけることができたなら、どんなに良かっただろう。
……疲れてしまった。
看護に対してではない。
毎日続く病院通いに対してでもない。