淋しがりやの足跡
草一が百花の肩を小突く。
「バカ。秘密のノートっておじいちゃんが言ってただろ!」
「でも、読んでよしって言われたじゃん!」
ふたりは相変わらずケンカしそうな雰囲気。
私はふたりの間に入って、
「ちょっと待っていて」
と、リビングを出て行き、寝室に行った。
寝室。
鏡台の引き出しの、奥。
大切なアクセサリーなどと一緒に、あのノートをしまっている。
史郎さんとの、黄色い交換ノート。
ずっと開いていなかった。
手にとることもつらくて。
久しぶりにこの黄色い表紙を見た気がする。
リビングに戻ると、私は交換ノートをふたりの前に差し出し、
「どうぞ」
と、言った。
ふたりとも慎重に。
ゆっくりとノートに手を伸ばす。
百花が表紙をめくった。
「……?何これ?」
不思議そうに、草一に見せている。
「……本当だ、なんか書いてあるけど、読めないな」