淋しがりやの足跡

「1ページ目は、史郎さんが書いているはずよ。まだキレイな、読みやすい字だったはず」



ふたりの反応を見て、慌てて私は言った。

孫達が、
「ほら、これ」
と、私に見せたのは、1ページ目の前。

……表紙の裏だった。



ミミズがはったような、弱々しい字が書いてある。

確かに読みにくい。

これは、史郎さんが震える手で書いたものだとわかる。



「いつ、書いたのかしら。知らなかったわ」



行恵と正代もそばにやって来た。

「母さん、知らなかったの?」

「なんて書いてあるのかな?」



正代の旦那さんまで加わって、みんなで謎解きをするようにノートを見つめる。



「これ、平仮名だよね。全部」



草一がそう言って、
「『た』?『た』に見える……?」
とブツブツ呟く。



みんなで顔を寄せ合って眺めているうちに。

私には、何が書いてあるのかわかってきた。



「……たまごやき、ね」


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