淋しがりやの足跡
第2話
「行恵と正代には、オレから話したぞ。もう長くないって言われたこと」
翌日病室を訪れると、携帯電話を指差しながら史郎さんが言った。
行恵と正代は私達の娘で。
ふたりとも結婚を機に家を出て行った。
長女の行恵は離婚したけれど、実家には戻らず、ひとり暮らしを満喫している。
次女の正代は近くに暮らしてはいるものの、実家に顔を出すことは少ない。
「ふたりは何て?」
「うーん、まぁな。驚いてたよ。でも葬式や墓のこともあるからな。早く伝えておいたほうが、あの子達も心の準備ができるだろう」
「葬式とか墓とか言われても……」
まだそんな話、聞きたくない。
「生前にオレが準備できることはするって伝えたけれど、行恵に叱られた」
「叱られたって?」
「『そんなこと言う前に、ちゃんと元気にならないと!』ってな」
なるほど、行恵なら言いそうだ。