淋しがりやの足跡
「でもオレも、親父やお袋の時には慌てたからなぁ」
「それは、そうだったけれど……」
「ふたりとも今日、ここへ来るって言ってたぞ。病院の売店で何か、飲みものとか甘いものでも買っておくか?」
史郎さんは嬉しそうだ。
53歳と49歳の娘に、いつまで経っても子ども扱いするんだから。
……まぁ、それは私も一緒だけど。
数時間後。
ふたりの娘が揃って病室に顔を出した。
「父さん、思ったより元気そうね。少し痩せたみたいだけど」
行恵がじっと観察するように史郎さんを見つめる。
史郎さんは、
「お前は少しふっくらしたんじゃないか?」
なんて言って、いたずらっ子の瞳で笑った。
もう!とふくれっ面になりながらも、行恵は安心したように、すぐに笑顔になる。