4番目の彼女

8.土曜の夜

 ”ピンポーン”

 約束の土曜の夜、徹志くんの家を訪ねインターフォンを鳴らすや否や、勢いよくドアが開けられた。
 久しぶりに見るその顔は……目の周り真っ黒アイライナーメイクの徹志くんだった。

「どうしたのその顔!」

「ごめん。今日イベントだったんだ。メイクも落とさずさっき帰ってきたところ」

「間に合ってよかった」といったとおり、帰った来たばかりなのだろう。玄関に置かれたままの大きなバッグの上にはアウターとパーカーが無造作に投げられている。

「そういうメイクして踊ってるんだね、へぇ」

「大会とかだとしないけど、今日はショーケースだったから。……変?」

「ううん、カッコいいよ」

 メイクをした徹志くんは、それこそモデルかロックスターかという容姿で素直にカッコいいと思う。その顔で私の顔を覗き込まれると本気で照れてしまうからやめて。赤くなった耳触るのもやめて欲しい。そんなに嬉しそうにされたら、愛されてると勘違いしてしまいそう。

「ごめんね、顔洗うからちょっと待ってて。ついでにシャワーも浴びていい?」

「どうぞどうぞ」

 玄関を入ってすぐの洗面所の扉を開けると、徹志くんはおもむろにメイク落としオイルを手に取った。

「あ……」

< 17 / 34 >

この作品をシェア

pagetop