4番目の彼女
 ──これは絶対に遊び慣れてるな。

 だって、今の職業はダンススクールの代表だ。
 単なるインストラクターなどではなく、経営者。
 そしてこのチャラそうな見た目。

 遊んでないわけがない。

 思い返してみれば、二人きりでの二次会への誘いも、そのバーで勧めたカクテルも、自宅への誘いも手をつなぐタイミングも、何もかもがスムーズで手慣れすぎてる。
 よほどの訓練を重ねているとしか思えない。

「今度こそ、帰るね」

 空が白む頃、何回目かの行為のあとやっとこさ床に落ちたブラを拾い上げ後ろ手でホックを留めた。
 ハンガーにかけておいたワンピースを着ると、さも当たり前のように後ろのファスナーを上げてくれる優しさ。
 彼には自然な行動かもしれないが、こんな小さなときめきを積み重ねてしまうと、心がざわめかずにはいられない。

 だけど、好きだと言われたわけでも、付き合おうといわれたわけでもないし、ましてや洗面台にあったメイク落としやヘアピンに気づかないほどマヌケでもない。
 出窓の前に並んだダンス大会のクリスタルトロフィーのように彼にとっての光り輝く存在がいるに違いない。
 だから今夜が気まぐれの行為だったとしても、特に傷ついたりしない。
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