王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく
 壁には「整形靴技術者証」「義肢装具士」の証明書が貼られていた。
 作業台には足にトラブルを持っている顧客の写真や採寸、両足の長さが違う人用の靴の作り方など、メモや資料がどっさりと乗っていた。
 そして、(うずたか)く積まれた受注依頼の用紙。

 ……檜山の靴を待っている顧客必ずしも全てがトラブルに悩まされているかといえば、そうではないだろうが。
 真摯に靴に向かい合っている檜山を見れば、金でなんとかなると思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。

「陽菜には、既存の靴で見栄えがして楽ちんなパンプスを探してあげよう」

 
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