王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく
 早速陽菜に連絡しなければ。
 携帯を取り出し妹へSNSを送ろうとして、ふと指が止まる。

 檜山が陽菜に惹かれたらどうしようと、不安がじわじわと湧いてくる。
 先刻も、妹の写真を熱心に見過ぎではなかったろうか。
 ようやく晴恵を見てくれるようになったのに、彼まで陽菜の虜になってしまうのだろうか。
 檜山の口から陽菜への礼賛を聞かされたら、晴恵はこれまで通り振る舞えるのだろうか。

「……私には彼を縛る権利すらない」

 気づいた事実が、胸にささる。

 晴恵は落ち着こうと深く息を吸い込で、妹にメッセージを送った。  
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