絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
それがますます美澄の癪に障った。
「先生はたくさんの患者さんを診ていらっしゃるから覚えていないでしょうけど、私は先生から言われたこと、ずっと覚えていますから」
精一杯丁寧に、棘を忍ばせつつ、キッと睨みつける美澄の様子を見て、彼はようやく思い当たったらしい。端整な双眸をわずかに崩した。
「ああ。ひょっとして、あのときのか」
「思い出してくれましたか?」
「まったく、あの人も誰を紹介するのかと思えば……誰でもいいわけじゃないんだがな」
今にも舌打ちをしかねない、急に態度を変えた医師とは思えない態度に、美澄はますますムッとする。
下等生物を見るような冷めた目が気にいらない。看護師や保育士にナイチンゲールのような聖母さを求められても困る。自分という医師がすべてみたいな尊大かつ横柄な態度は改めてもらいたいというもの――。
美澄は悶々としながら、彼との出逢いを振り返った。
――去年の十二月、あれはクリスマス間近の日曜日だった。
美澄は保育園のクリスマス会で使う小道具の買い出しのため、雑貨屋に買い出しにきていた。
会計を終えて外を見ると、日が暮れて雪が降りはじめ、珍しい光景に通行人皆が空を見上げていた。東京では十二月に雪が降ること自体珍しい。
ちらちらと輝く冬空に感嘆し、さあ帰ろうと店を出たところ、歩道にざわめきが走った。
なんだろうとその方角をみれば、自転車が猛スピードでやってくるではないか。そのせいで、人の方が慌てて避けているのだ。自転車を運転していた男はスマホを眺めながら運転しており、人が避けていくのをいいことに、前方をまったく気にする様子がない。
(誰も注意しないし、怖いな。巻き込まれたら大変……)
危ないから気をつけようと自転車が去るのを待った。その時だった。
美澄は店の中から子どもが飛び出してきたのを発見する。見覚えのある顔から保育園に通う園児であることがわかった。
どうやら母親の会計を待ちかねて雪空を見るために飛び出してきたらしい。
『だめ! あぶない――!』
このままじゃ間に合わないかもしれないと、美澄はその子のもとへと全力走った。
「先生はたくさんの患者さんを診ていらっしゃるから覚えていないでしょうけど、私は先生から言われたこと、ずっと覚えていますから」
精一杯丁寧に、棘を忍ばせつつ、キッと睨みつける美澄の様子を見て、彼はようやく思い当たったらしい。端整な双眸をわずかに崩した。
「ああ。ひょっとして、あのときのか」
「思い出してくれましたか?」
「まったく、あの人も誰を紹介するのかと思えば……誰でもいいわけじゃないんだがな」
今にも舌打ちをしかねない、急に態度を変えた医師とは思えない態度に、美澄はますますムッとする。
下等生物を見るような冷めた目が気にいらない。看護師や保育士にナイチンゲールのような聖母さを求められても困る。自分という医師がすべてみたいな尊大かつ横柄な態度は改めてもらいたいというもの――。
美澄は悶々としながら、彼との出逢いを振り返った。
――去年の十二月、あれはクリスマス間近の日曜日だった。
美澄は保育園のクリスマス会で使う小道具の買い出しのため、雑貨屋に買い出しにきていた。
会計を終えて外を見ると、日が暮れて雪が降りはじめ、珍しい光景に通行人皆が空を見上げていた。東京では十二月に雪が降ること自体珍しい。
ちらちらと輝く冬空に感嘆し、さあ帰ろうと店を出たところ、歩道にざわめきが走った。
なんだろうとその方角をみれば、自転車が猛スピードでやってくるではないか。そのせいで、人の方が慌てて避けているのだ。自転車を運転していた男はスマホを眺めながら運転しており、人が避けていくのをいいことに、前方をまったく気にする様子がない。
(誰も注意しないし、怖いな。巻き込まれたら大変……)
危ないから気をつけようと自転車が去るのを待った。その時だった。
美澄は店の中から子どもが飛び出してきたのを発見する。見覚えのある顔から保育園に通う園児であることがわかった。
どうやら母親の会計を待ちかねて雪空を見るために飛び出してきたらしい。
『だめ! あぶない――!』
このままじゃ間に合わないかもしれないと、美澄はその子のもとへと全力走った。