今夜、私は惑わされる。
「なぁ、知ってるか?“闇の王子”のやつ」
「知ってる、知ってる!学校で色んな人のお金を取ってた奴が、やられたんでしょ?」
「なんか俺、それ知ってスッキリしたんだけど!」
学校の廊下で色んな学年の人達が口々に言う。
“今まで散々、好き勝手やってた奴が闇の王子にやられた”と。
本当なのかな……?
本当だったら、はじめ君は今、どうしているのかな……?
はじめ君が”お金を三万持ってこい“、”闇の王子を倒してこい“と言われた日の明後日は昨日だったから。
「あっ!はじめ君!」
「七葉ちゃん、どうしたの?」
もしかしたら、校舎裏にいるのではないかと思ったら、やっぱり居た!
「……昨日、大丈夫だった?!なんか闇の王子がどうとか聞いたけど」
「大丈夫だったよ。昨日、正直に『闇の王子は倒せない』って言ったら闇の街に連れてかれたんだ」
えっ!あの、怖い場所に……?
「それで、闇の王子のところに行ったんだ。そしたら、闇の王子が僕以外を一瞬で倒したんだ」
闇の王子さん、さすがだな。
私が絡まれた時に助けてくれたし、はじめ君も助けるなんて。
王子様でもあるし、ヒーローでもあるんだな。