今夜、私は惑わされる。
「ん?」
あっ、見てたのバレちゃった。
「……あの、お名前は……?」
見てたのをごまかすように、そして、前に聞きそびれた名前を聞いた。
「あぁ、俺は三橋浅羽。お前は?」
「えっと、広末七葉です」
「漢字はどうやって書くんだ?」
「漢数字の“七”と葉っぱの“葉”です」
「じゃあ、“なな”だな」
えっ……?!
もしかしてあだ名……?
七葉という名前なだけあって、今まであだ名をつけてもらったことがなかった。
だから、あだ名をつけてもらっている人を羨ましく思っていた。
なんか、あだ名ってほんとに仲がいい人で呼び合うイメージが強いから。
「俺とななは、同い年だから、敬語はやめよう」
「あ、は……うん」
あれ……?
私、年齢伝えたっけ……?
伝えたの忘れてるだけかな!
「三橋さん……
「浅羽」
「へ……?」
「浅羽って俺のこと呼んで」
「あ……あ
期待したような瞳で私のことを見ている。
男の子のことを呼び捨てで呼んだことないよ……!
「浅羽、くん?」
頑張って呼び捨てで呼ぼうとしたけど、やっぱり私には無理っぽい。
「今はそれで許してあげる」
「今は……?」
「俺は、ななと会いたいから会いに来る。それで、今よりももっと仲良くなったら“浅羽”って呼んでよ」
浅羽くんが会いに来てくれるってことは……会えるのは今日で最後じゃない!
「えっ!ほんとに会いに来てくれるの?」