今夜、私は惑わされる。
「ミステリー」
「難しそう……」
「そんなことないよ」
本のあらすじを説明してくれるはじめ君。
丁寧に説明してくれてるんだけど……全く分からない。
「やっぱり、難しくない……?」
「全然」
私が難しさで首を傾げている中、はじめ君は涼しそうな顔をしている。
「七葉ちゃんは最近、闇の王子さんに会ったんだよね?」
急に話題をふられる。
「そうだけど……なんで知ってるの?」
『会いたい』とは言ったけど、『会えた』とは言ってないはず……。
「七葉ちゃんの顔を見れば分かるよ。最近ずっと笑顔だから」
「そうかな……?」
「うん。楽しそうで良かった」
はじめ君は本当にいい人だと思う。
いつも私の話を真摯に聞いてくれる。
「はじめ君っていい人だよね」
「え、急にどうしたの?」
「褒めてるの」
「あ、ありがと」
はじめ君は、照れながら、喜んでいた。