今夜、私は惑わされる。


「……お願い、助けて」



少女は諦めたように下を向いた。


彼女のきれいな頬に一筋の涙が流れる。


その時、


「お前ら、やめろ」


一人の男の声があがった。


不良たちは彼を見た瞬間、みんな顔を真っ青にして呟いた。



「……闇の王子」


「やめないと、どうなるか分かってんだよな?」



ドスの利いた声で不良たちを脅す“闇の王子”。


こっちまで身震いしてきた。



「や、やめます!すいませんでした」



不良たちは物凄いスピードで逃げていった。



「大丈夫か?」


「あ、ありがとうございます」



心配そうな眼差しで少女に手を差し伸べる彼。


少女は震えながらもその手をぎゅっと握りしめる。


しかし、足が震えて立つことが出来ない。



「……仕方ないな」


「え?ひゃっ!」



“闇の王子”は少女を抱きかかえた。


そして、二人はバイクに乗って立ち去っていった。


“闇の王子”、それは王子様のようなルックスに暴走族の総長さま、そして、“闇の街”を支配している人物。


この二人がどうなったのか?


そんなの僕には分からない。


だけど、ただ一つ。


これだけは言えることがある。


闇にのまれた少年、少女はもうそこからは抜け出せないということ。


きっと、あの少女は“闇の王子”という闇にのみこまれるだろう。






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