今夜、私は惑わされる。
もしかして……
「ちぇー。浅羽は過保護だな」
浅羽くんだ!
「なな、大丈夫か?」
浅羽くんに名前を呼ばれるだけで、安心する。
「うん。大丈夫」
「ほんとに?」
「うん」
浅羽くんはいつも優しい。
「おーい。俺の存在忘れてないか、浅羽」
「ん?お前、居たのか?」
「居たのか、じゃねーよ」
言い合いをしている二人。
急に絡んできた男の人の名前、清って言ってたけど……浅羽くんとどういう関係?
「ななちゃん、はじめまして。俺はFellowの清。浅羽の女やめて俺の女にならねー?」
やっぱり、この人チャラい……。
「え、遠慮しておきます……」
「清、いい加減にしろよ。てか、なんで来た?」
「謎の組織の話だよ」
浅羽くんと清さんのまとう雰囲気が一瞬で変わった。
“謎の組織”、この単語が出ただけで、空気が張り詰めた。
「動き出したのか?」
「あぁ。目的はSignalの総長、お前だろうな」
私の目の前で知らない単語が飛び交う。
浅羽くんが目的……?
謎の組織って一体何……?
「あの……何のお話をしているんでしょうか?」
恐る恐る、聞いてみる。
「ん?」
「謎の組織とか、FellowとかSignalとか……」
「えっ?!ななちゃん、知らないの?」
清さんが顔をぐっと近づけてくる。
「清、近い」
「いや、俺らのこと知らないのななちゃんくらいじゃね?」