今夜、私は惑わされる。

だから、出来るだけ、怖く無さそうな人を探して話しかけた。



「あの、すいません。道を……」


「君可愛いね?」


「え……?」


「何、一人でこんなとこ来て。誘ってんの?」



腕をガシッと掴まれる。


この人、何を言ってるの……?


怖い……。



「……私はただ、道を聞こうと」


「嘘つかなくていいって」



スカートの中に手を入れられ、太ももを撫で回される。


寒気がする。



「やめてください!離して!」


「いいじゃん、いいじゃん」



男の人は私の太ももを撫で回し続ける。


怖い、怖い、怖い……。



「楽しそうなことしてんな」


「俺らも混ぜろよ」



二人組の男の人が近づいてくる。


そして、私のことをまるで品定めをしているかのように見ている。



「結構可愛いじゃん」



ニヤニヤしながら近づいてきた。


一人に腕を掴まれて動けないくらいなのに、これ以上人が増えたら……。


最後の力を振り絞って声を上げた。



「助けてください!」



声をあげても、この街にいる人はみんなチラチラと私を見るだけ。


もう、だめだ……。


視界が涙でにじむ。



「……お願い、助けて」



諦めて小さい声で呟いた時、



「お前ら、やめろ」



一人の男の人の声が聞こえた。


声の聞こえた方を見ると、


シュッとした鼻、風が吹くとサラサラとなびく髪。


うわ……かっこいい。



「……闇の王子」



私の腕を掴む手が急に緩む。



「やめないと、どうなるか分かってんだよな?」



ドスの利いた声。

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