今夜、私は惑わされる。
涙の味
スマホの着信が鳴り響く。
「七葉、スマホ鳴ってるよ」
「あ、ほんとだ」
吉良と一緒にお昼ごはんを食べているとき、電話がかかってきた。
誰からかかってきたのか、スマホを覗き込むとそこには“清さん”とでていた。
心臓がドクドクと鳴り、嫌な予感がするにもかかわらず私は電話に出た。
「もしもし……
『ななちゃん!大変だ。浅羽が浅羽が……!』
電話口から聞こえたのは清さんの慌てた声。
「浅羽くんが、どうかしたんですか?!」
『enemyに、意図的に車で引かれて意識不明だそうだ……』
その瞬間、時が止まったような錯覚に陥った。
浅羽くんが……?
そんなの嘘、嘘だ。
「七葉大丈夫?」
吉良に手をさすられる。
『引かれた時に頭を打ったらしいからもしかしたら……死ぬかもだって』
「そ、んな」
目頭が熱くなる。
『なぁ、ななちゃん。来てやってくれないか?浅羽はななちゃんの話をする時いつも笑ってた。大好きだって言ってたんだ。お願い。ななちゃん、浅羽に会いに来てくれ』
浅羽くん、そんなことを……。
会うのをやめようと言われた時、私は何も言えなかった。
浅羽くんと私の関係はこんなにも脆いのに。
後悔したくない。
「私、浅羽くんに会いに行く」
そう言った後、電話を切って走り出した。
吉良も空気を読んでくれたのか
「先生にはどうにか言っておくから!後悔だけはしないでね、七葉!」
と言ってくれた。
浅羽くん、やっぱり私は忘れられないよ。
今も好きなんだから。
だから、お願い。
無事でいて。