今夜、私は惑わされる。
「ななちゃん、ちょっと休憩したら?」
浅羽くんの手を握りしめてから二時間後。
清さんが心配して声をかけてくれた。
「大丈夫です。浅羽くんが目覚めたときに一番に話がしたいので」
「そう?俺はロビーでちょっと電話してくるから」
「はい」
清さんが病室から出ていった後、私は呟く。
「浅羽くん、早く目覚めてよ。もう、二時間も経ったんだよ?」
何回、呟いたか分からない、目覚めてという言葉。
このまま、浅羽くんが目覚めなかったらどうしよう。
そんなことも、思ったけど、強くてかっこいい浅羽くんならきっと、大丈夫。
「……なな?」
うっすらと聞こえた声。
ニ週間ぶりに聞いた声が懐かしく感じる。
「浅羽くん?!浅羽くん!」
目から涙が流れる。
一体、今日、何回涙を流しただろう。
浅羽くんの手がのびて、私の頬を触る。
「なな、久しぶり。もう、会えないかと思った」
「……会えたよ、また」
「うん」
浅羽くんの震えている声。
そして、浅羽くんも涙を流している。
「ねぇ、なな。こんな弱い俺だけどななのこと守っていいかな?」
「浅羽くんはずっと私のこと守ってくれて、強いよ」
「なな、好きだ」
「私も」
お互いの唇が触れ合う。
涙で濡れて、水っぽい味がした。
でも、それが嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。