今夜、私は惑わされる。


私に絡んでいた男の人達の顔が真っ青になっていく。



「や、やめます。すいませんでした!」



そして、ものすごい勢いで逃げて行った。


こ、怖かった……。


足の力が抜けて、座り込んでしまう。



「大丈夫か?」



私を助けてくれた男の人が私に向かって手を差し出している。


“闇の王子”って言われてたけど、本当の王子様みたい……。



「あ、ありがとうございます」



手をとり、立ちあがろうとした。


だけど、足が震えて……。



「……仕方ないな」


「え、ひゃっ!」



身体が宙に浮く。


これは、お姫様抱っこ……?!


そして、きっと彼のバイクなのだろう。


バイクに乗せられる。



「ど、どこに……?」


「道に迷ってたんだろ?家まで送ってく」



ヘルメットを頭に被せられる。


そして、彼と視線が合う。



「ちゃんと掴まっておけよ」


「は、はい」



彼のおなかに手を回してギュッと抱きついた。


大きい背中が頼もしい。


ブルルルルルル……


エンジンの音が鳴り響く。


私と彼の乗ったバイクが出発した。



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