今夜、私は惑わされる。
ど、どうしよう……。
こういう、酷いことをされているのを見たら助けないといけないのに、
足が怖くて動かない……。
「本当に持ってなかったら、許してやるよ」
「……本当に持ってないです」
男の子がうなだれたように、下を向き答える。
「あっそ!今日は見逃してやる。だから、明後日には三万持ってこい」
ひどい……。
この人達は、男の子からお金を取ってたんだ……。
「明後日なんて、無理です……」
金髪のリーダーは少し考えたような素振りを見せて、男の子の耳で呟く。
小さな声だったけど、私にははっきり聞こえた。
『“闇の王子”を倒してこい』
金髪の人達は男の子をまるであざ笑っているかのようにして立ち去って行った。
“闇の王子”ってこの前、私を助けてくれた人だよね……?
有名な人なのかな……?
「……はぁ」
男の子は座り込んで、手で顔を覆っている。
「大丈夫ですか……?」
私は男の子にハンカチを手渡す。
殴られたところは真っ赤にはれ、手からは血が出ている。
「……大丈夫です」
彼はそう言ってハンカチを受け取ろうとしない。
「これ、使ってください」
「汚れますよ?」
「それくらい洗えば大丈夫ですよ」
「いえ」
素直に受け取ればいいものを……!
私はしゃがみこみ、男の子の顔をハンカチで拭う。
「……大丈夫だって、言ってるのに」
「それでも、です」