今夜、私は惑わされる。
綺麗……。
近くで見た男の子の顔は思った以上に整っていて、綺麗だ。
それに鼻がシュッとして、髪の毛もサラサラ。
なんか“闇の王子”さんみたいにかっこいい。
「……いたっ」
「あっ、ごめんなさい……」
ある程度、綺麗になった。
手に貼る用の絆創膏をカバンの中からさがす。
「……どうして、僕なんかにこんなことしてくれるんですか?」
「え?」
私は絆創膏を探す手を止め、男の子を見る。
急だな……。
「いつもみんなは、あの不良達に絡まれるのが怖くて僕のこと、見て見ぬふりしてる。君が初めて」
「……だって、あんなの見てそのままなんて、無理です。まぁ、殴られる前に止めに入るのは出来なかったんですけど……」
私は再び、カバンの中を探す。
「……面白い。何年生ですか?なんとなくだけど僕と同い年な気がする」
「二年です」
「じゃあ、同い年だ」
カバンから絆創膏を見つけ、男の子の手に貼り付ける。
「ありがとう」
「私、広末七葉って言います」
「僕は三橋はじめ。ねぇ、また話さない?」
はじめくんが立ち上がるのに合わせて私も立ち上がる。
「いいですよ!」
「今日はありがとう!またね」
はじめくんが手を振ってくれる。
それに、手を振り返す。
初めは感じが悪い人って思ってたけど、本当はそうではないのかも……?
ていうか、明後日のやつ大丈夫かな?
「ねぇ……え?」
少し、視線をはじめくんから外しただけなのにもう、彼の姿はなかった。