これからもどうぞよろしく

「いや、え。でもチョコ、」

「あれね、甘くないチョコレートだったの。ほら、カカオがいっぱい入ってるやつ」


チョコはチョコでも甘くないチョコレート。

高校生の頃、一時期それにハマっていた時があって、それがちょうど秋と隣の席だった期間と被っていた。


だから秋に、よくチョコレートを食べる女だと思われていても、何もおかしくはないのだ。


……まぁそれが理由で秋もチョコを買うようになったのには驚いたけど。



「でも、俺がやったチョコ食べてたじゃん」
「食べてたよ?」

それがどうしたの?

小首を傾げて秋の目を見つめれば、そこに浮かぶ困惑の色がより一層濃くなった。


「……俺、今試されてる?」
「えぇ? なんでそうなるの」


突拍子もない結論に落ち着いた秋に、驚きと笑いが同時にこみ上げてくる。そして同時に、そんな秋が無性に好きなのだと強く実感する。


笑いすぎて滲む視界から見えた秋は、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

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