これからもどうぞよろしく
口元を押さえてるくせに、隠せてない耳が赤く染まっているところが、なんとも愛おしい。
「……言ってくれれば良かったのに」
「へ?」
「甘いもの苦手なら苦手って。そしたら……」
「も〜わかってないなぁ!」
秋が最後の悪あがきと言わんばかりにもごもごと話すから、こっちの方がやきもきしてしまう。
本当にわかってないのか、それともわかってるのにわからないフリをしているのか。
……もしかして、試されてるのは私の方?
「秋から貰ったってことが大事なの! だから何を貰ったとか、そんなのは重要じゃなくて……」
……いや、違う。
胸を焦がすほど甘いあのチョコレートだからこそ、意味があった。
「……やっぱ今の無し。秋が好きなものを私にくれたってことが、すごく嬉しかったの」
好きな人が好きなものを自分と共有したいと思ってくれることほど幸せなことはないのではないだろうか。
自分でも気づかないくらい無意識のうちに、私は多くの幸せを受け取っていたのだ。