これからもどうぞよろしく
「俺の気持ちわかった?」
クスクスと笑いながらそう問うた秋に、つられてこっちまで気の抜けたように笑ってしまう。
「もーごめんって」
口につけたコーヒーはすっかりと冷めてしまっていた。
それに少しだけ驚くと、同じようにマグに口をつけた秋と目があって、また2人で笑った。
重ねた年月は望まなくとも私たちを大人にしてしまった。
あの頃は言えなかったことを今では簡単に言えるようになったと同時に、あの頃簡単に言えたことが今ではすごく難しくなってしまった。
それでも、その過程を一緒に歩みたい人が目の前にいる。
"これからもどうぞよろしく"
心の中で呟いた声に、薬指のシルバーリングがきらりと光ったような、そんな気がした。
〜fin〜