ライム〜あの日の先へ

あなたに会いたい


異変に気づいたのは、零次が日本へと発ってから三ヶ月が過ぎた頃だった。

卒業後はこのままアメリカで就職するつもりだった。だが、いずれ日本に帰ることも想定して日系企業に狙いを定めて動き出した矢先。

「鈴子、なんだか顔色が悪いな。風邪か?」

真っ先に鈴子の異変に気づいたのは一成だった。

「なんだろう、ずっとだるくて。少し熱っぽいし、吐き気もする。今日は学校休もうかな」

「そうだな。もし風邪なら友達にうつしてしまうからな。
そろそろ時間だ。仕事行ってくる」

リビングで新聞を読んでいた兄はパサリと新聞を小さくおりたたんだ。

日本語版の新聞の片隅に、五嶋商事に新しい社長が就任したとの記事。零次の顔写真と簡単な経歴が載っていた。

「ついこの間まで、ここでご飯食べていた零次くんが、社長さんか。わかっていたけれど不思議ね」
「あぁ。でもアイツなら大丈夫。俺はこれから会社がどうなろうとも、零次を信じてついていくつもりだ」

本当に仕事が好きで、会社が好きで。そこまで人生かけて打ち込める仕事ができる兄の姿は、尊敬できる。

鈴子にとっては夢であるCAの仕事も、きっと人生かけるほど夢中になれる仕事。

ーーまずは、その夢を叶えるためにがんばろう。


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