ライム〜あの日の先へ
夏の太陽がジリジリと照りつける。
絡みつくような熱い空気に、一気に汗が吹き出した。

スケジュールがいっぱい、か。
ロサンゼルスにいた頃も仕事ばかりしていた。今はあの頃よりもっと忙しいよね。

一条のご令嬢とのことだってあるし。

どうしよう。



ビルの近く、日陰になっている生け垣のレンガに腰を降ろし、鈴子は頭を抱えた。

相談したかったけれど、無理。
アポイントがないと、会うこともできないなんて。

ーー零次くん。
私、妊娠したの。
零次くんの邪魔は絶対したくない。一条さんとの結婚も応援してる。だから、産まない。

ただ、一応相談したかった。

もしかしたら。
本当に、ちょっとでも零次くんが望んでくれたら、なんて。そんな淡い期待もある。
だって、私、今でもすごくすごく零次くんが好き。忘れられない。
ほんの一週間だったけど、本当に幸せだった。あの幸せな日々は思い出だけ残ると思ってたのに。
まさか、宝物まで授かっていたなんて夢にも思っていなくて。



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