ライム〜あの日の先へ
一成がやや低い声でため息混じりでつぶやく。電話の向こうで一人何かを納得したようで、零次は眉をひそめた。

「鈴子の答えって？俺に会わないこと？」

だが、一成は答えない。それがなんだかひっかかる。
何かを言いたそうで言ってくれないもどかしさのようなものを感じた。

『最近はどうだ？毎日忙しいだろ。ちゃんと休めてるか？』
「まぁ、今が正念場だからな」
『零次は一人で抱え込みやすいから。
相談できる相手、頼れる相手はちゃんといるか？』
「心配ありがとう。実は、一条琴羽に助けてもらってるんだ。困ったときにはアドバイスを受けて」
『そうか……一条はライバルだというのに余裕だな』
「ライバルといえるほど、俺にはまだ力がないから。琴羽の協力がなかったら、俺は一か月も持たなかったと思う」
『零次がずっと一条の御令嬢に心を寄せていたことは知ってる。その人が素晴らしいパートナーになってくれたのなら、安心だな』

久しぶりに聞いた一成の声は、穏やかで優しく耳に残る。変わらないその声に、なんだかホッとする。

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