ライム〜あの日の先へ
「鈴子がせっかく来てくれたのに悪かった。
もし時間があえば食事でも一緒にしたかったんだけど、俺、しばらく予定びっしりで」

『鈴子の方から電話もなかった?』

「あぁ。俺が忙しいと思って遠慮しているのかもな。
実際、寝る暇もないくらい忙しいんだ。
あぁ、一成の声を聞いていたら、ヤバい。弱音吐きたくなる。
正直、俺には社長は荷が重くて。失敗できないってプレッシャーに押しつぶされそうなんだ。駆け引きみたいなことは一番苦手なのに」

『零次、焦るな。平社員の俺にアドバイスは何もできないけれど、零次にならできると、信じてる』

一成の言葉が疲れた心に優しく響く。さんざん世話になったロサンゼルス時代を思い出して、切ないくらいだ。

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