ライム〜あの日の先へ
「ご心配ありがとうございます。私が出張だったので、一人で無理させてしまいました。
もう大丈夫です」
「そうですか。それならよかった」

うんうんとうなずいた琴羽はくるりと凛の方を向くと、優しげな笑みで話しかけた。

「リンちゃん、元気になったらまたハルトと遊んでね」
「もう、げんきだよー。ハルトくんといっぱいあそびたい」
「ありがとう。ぜひ今度、うちに遊びに来ていっぱい遊んで」
「え、いいの?うれしい!いきたい!」

凛は喜びで目を輝かせながら、ちらっと一成の顔をうかがう。
この場では一成が決定権を持っているとわかっているのだ。

「ありがとうございます、一条さん。これから梅雨時になれば凛の体調はもっと不安定になります。
季節が変わって落ち着いたらぜひ」

季節が変わる頃には、引っ越しして環境も変わる。この約束は果たされない。
それを見越しての発言だ。

琴羽と会話をするのは疲れた。
情報を探るように会話の全てに罠が張っているよう。言葉選びは慎重にならざるを得ず、緊張させられる。


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