ライム〜あの日の先へ
「失礼します、望田凛ちゃんのご家族のかた。主治医の先生からお話があります。こちらへお願いします」

そこへ看護師が呼びに来た。


「わかりました。
ちょっと行ってきます」

一成は琴羽に断りを入れてから、看護師の後ろをついて病室を出た。


それとほぼ同時だった。


廊下のエレベーターの扉から水上と零次が降りてきたのは。


スタッフステーションに案内される一成と、エレベーターから降りてきた零次とがすれ違う。


「凛ちゃんは、本当に頑張り屋さんですね。採血したときも泣かなかったんですよ」

看護師の話を聞きながらスタッフステーション内に入る一成は、零次に気づかない。


一方。


ーーりんちゃん?

看護師の声に反応して、零次は通り過ぎたスタッフステーションを振り返って見た。
ナースの後ろを黒のチノパンに爽やかなブルーのシャツを着た男性が歩いている。男性は後ろ姿しか見えない。

ーーあの子の父親?もしや、鈴子の?

「五嶋くん、こっちです」

スタッフステーションの前で足を止めた零次に水上が声をかける。零次はあわてて水上の後を追った。


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