ライム〜あの日の先へ
早く、新しい病院を見つけよう。環境を整えて、リセットして、今まで通り暮らしていこう。

空になったカップをゴミ箱に捨て、鈴子は病室へ向かおうとした。

だが。

とっさに自動販売機の脇の壁に隠れた。

小児病棟で大人の男性二人が連れ立っている姿は目立った。だから気づいたのだ。
二人が自動販売機でコーヒーを購入する。背中を丸めて息をひそめた鈴子には気づかない。
それから二人は先ほど鈴子が座っていた席に向かい合わせで座り、話を始めた。


耳をすませば二人の声を拾うことができた。


しばらくして、一成だけが立ち上がってこの場を去った。
零次は背中を丸めてうつむいている。泣いているようにも見えた。

鈴子はそんな零次の姿を振り切り、急いで病室へと戻った。



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