ライム〜あの日の先へ

ほどける糸 鈴子


凛が入院した翌日、鈴子はプリスクールのスクール長へと挨拶をした。


「大変でしたね、鈴子先生。りんちゃんはどうですか?」

「今回は一条さんのおかげで病院での処置も早くしていただき、経過も順調で明日にも退院できます。
ただ、凛のために転地療養を考えようと思っています。大変申し訳ないのですが、今月いっぱいで辞めさせてください」

「うちでも喘息のお子さんが増えていて、医療機関と提携したり対応できるスタッフを増やして対策していこうと決まったところなんです。
鈴子先生のお気持ちもわかります。あんなに可愛くて小さなりんちゃんが苦しんでいる姿、見たくないですよね。
でも、鈴子先生はうちにはなくてはならない人材です。どうか、辞めないでください」

突然の退職の願い出だと言うのに、スクール長はひどく落ち着いた様子でそう告げた。

もしかすると鈴子が退職を願い出ると想定していたのかもしれない。
思っていた以上に強く引き止められて、鈴子もついほだされてしまう。
そもそも、仕事は大好きなのだ。

この場ではこれ以上強く言えず、退職はとりあえず保留の形となった。


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