ライム〜あの日の先へ
「鈴子先生!!どうしたんですか」

ずぶぬれでやってきた鈴子を見て真っ先に声をあげたのは、スクール長だった。

「車にかけられてしまって…」
「早く着替えて。風邪引いちゃうわ」

帰るまでに服が乾くことを祈りながら、更衣室で仕事用のポロシャツとチノパンツに着替えた。



「あぁ、鈴子先生。こんど、1歳児クラスに入園するクレアちゃんです。生まれも育ちもアメリカなんです。よろしくおねがいします」

1歳児担当の先生が抱っこしているのは、可愛いリボンのついたゴムで髪をくくった女の子だった。ご機嫌斜めのようで、グズグズしている。

「はい。よろしくね、クレアちゃん」

鈴子が顔をのぞき込むと泣き出してしまった。

「人見知りがすごいんです」

担当の先生があやすが、慣れるまではしばらく掛かりそうだ。

「See you later(じゃあまたね)」

鈴子はそう話しかけて、今日の担当クラスへと向かった。

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