ライム〜あの日の先へ



ーー怖がらないで。私はずっと一緒にいるから。たとえ何があっても、私は絶対にあなたの味方だよ。負けないで。大好きだよ。


あの子と同じことを言ってる。


零次は、ハンドルを操作しながら、ちらりとバックミラー越しに後部座席を見た。だが、子供の背中をさするために下を向いていて女性の顔は見えない。

心折れそうになるたびに思い出しては励まされた。屈託のない底抜けに明るく純粋な笑顔。いつでも裏表なく一途に零次を好きだといってくれた少女のことをまた思い出す。

今頃は夢を叶えて、CAになっていることだろう。大空を飛びながら、あの笑顔で最高の接客をしているはずだ。



ーー鈴子。

君に会いたい。

あの日、君に言えなかった言葉が棘となって今でも心の中でチクチクとする。

俺は卑怯な男だった。君に愛される資格もないほどに。


だから、今、願うのは君が幸せに暮らしていることだけ。





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