ライム〜あの日の先へ
『突然すみません、鈴子先生のご家族の方ですか?
私は光英大学病院で医師をしております、水上と申します。今、息子をプリスクールに迎えに来ておりまして。
鈴子先生の容態なのですが、熱が高く、喉も赤い。雨に当たって体が冷えたせいだと思われます。すぐにお迎えが無理ならば、私がご自宅まで車でお送りしますが』

電話の声が突然知らない男の声に変わる。

プリスクールの生徒の親に迷惑をかけるわけにはいかない。
一成が悩んでいると、おもむろに零次がスマホの近くに顔を寄せた。

「水上さん?五嶋です。
今、五嶋商事本社におります。20分ほどでそちらに着きます。もし、可能でしたらそれまで鈴子についていてもらえますか?」
『五嶋くん??これは奇遇ですね!わかりました。鈴子先生のこともりんちゃんのことも任せてください』

こんな偶発的な事態にも物怖じせずに対応できるのが、零次だ。ここ一番の豪胆さは昔と変わっていない。

「鈴子とお子さんのことが第一だろ、一成。思うところは色々あると思うが、今はとにかく急いで二人のもとへお前を送ることが最優先だ。行くぞ」

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