ライム〜あの日の先へ
「俺の側は問題ない。鈴子のことが第一だ。それにきっと鈴子の子どもなら愛せると思う。
たとえ、知らない男の子どもでも」

不意に湧いた希望に零次の心が浮き立つ。

「イチから始めたっていい。もともと可能性はゼロだと思っていたんだ。
ゼロの次はイチに成る。お前たちが教えてくれた」


車がプリスクールの駐車場に到着する。

助手席の一成が車を降りて傘を広げている間に、零次は傘もささずスーツの上着を頭から被って園内へと飛び込んでいった。



零次がロサンゼルスを発ったあの日、三人の時間は止まった。
あの熱意があればもう一度、始められるかもしれない。

鈴子も、零次も、一成も、やっとあの日の先へ向かうための一歩を踏み出せるかもしれない。

走る零次の背中をを見つめながら、一成はそんなことを思っていた。



< 175 / 231 >

この作品をシェア

pagetop