ライム〜あの日の先へ
「凛、寝たぞ。薬は飲んだか?鈴子も、もう休め」

そこへ一成が戻ってきた。

「今のうちだからな、そのうちお前のその役目は俺が取って代わってやる」
「無理だね。夜、眠くなった凛は俺か鈴子じゃなきゃ扱いきれない」
「悔しいなぁ、その自信。でもその自信がつくだけ、お前にも苦労させてきたんだな。
すまなかった」
「苦労?馬鹿言うな、凛と一緒の時間はどんな時も最高に幸せな時間だ。知らなかったお前が哀れに思うよ。残念だったな」

そんな憎まれ口を叩きながら、一成の目は潤んでいた。
久しぶりに親友として零次とこんな会話ができることに、喜びを感じていたのだ。

「あんなに好きだった仕事を辞めて、コンサルに転職して。それでも五嶋商事の仕事に携わってくれていた。
公にはしていないが、ネクストゼロコンサルティングは俺と福島さんで学生時代に起業した会社だ。俺は五嶋商事に入ることになってすぐに手を引いてしまったんだけれど、その後を福島さんが大きくしてくれた。
まさか、そこにお前がいたなんて思わなかったよ」

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