ライム〜あの日の先へ
バイバイと言って切れたスマホの画面を見つめた。日付と時刻だけのつまらない待ち受け画面だ。

ーー琴羽は待ち受け画面をハルトの写真にしていたっけ。明日、りんちゃんの写真を撮らせてもらおう。

「ゆっくりと時間をかけて、距離を縮めていけ。慌てることはない。血の繋がりがきっと解決してくれる」

一成に諭され、零次は大きく頷く。

凛だけでなく鈴子とも、もっと一緒にいたい。あの日の先へ進みたい。愛を交わして笑い合って、たくさんの時間を共有したい。

「タワーマンションでも買って一緒に住もうって言ったら来てくれるかなぁ。お前も一緒に買わないか?」
「あのな、そんなご飯でも一緒にくらいのノリでとんでもないこと言ってくれるな。大会社の社長になって贅沢が染み付きやがって」

目の前のデスクでパソコンとにらめっこしていた一成が大きなため息をつく。

「凛はファミレスのハンバーグが大好きなんだ。それくらいでいいんだって。
さて、俺は終わりっと。データ送っておいたから見ておいてくれ」
「相変わらず仕事早いな」
「お前と違って雑念がないの。他にも仕事抱えてるし。
あ、そうだ、俺、明日は遅くなるから。鈴子と凛のこと、よろしくな」
「……ありがとう、一成」
「俺から大事な妹と姪っ子を取り上げようとする極悪人め。せいぜい二人に尽くしてこい」

一成は零次にひらひらと手を振って笑って退室していった。

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