ライム〜あの日の先へ
その時、母の体の下から這い出るようにして父がテーブルの脚をつかんだ。
振動でテーブルの上から丸い物体が転がり落ちる。
その丸い物体は床の上をコロコロと転がり、泣いていた鈴子の足にぶつかって止まった。
鈴子は泣くのをやめてそれを拾うと、よちよち歩きで一成の元へとやってくる。
「おにい」
鈴子が涙でぐちょぐちょの顔に無邪気な笑顔を浮かべ、拾った丸い物体を一成に差し出した。
その瞬間、鈴子だけが色を取り戻して見えた。
丸い物体は色鮮やかな緑色のライムの果実だった。落ちた衝撃で立ち上がった爽やかな芳香が鼻をくすぐる。
耳も目も鼻も、みるみる感覚が戻ってきた。
ーーとにかく、鈴子を守らなくちゃ。
何をすべきかわからなかった一成が明確に見つけた使命。
一成の止まった時間が動き出したのだ。
振動でテーブルの上から丸い物体が転がり落ちる。
その丸い物体は床の上をコロコロと転がり、泣いていた鈴子の足にぶつかって止まった。
鈴子は泣くのをやめてそれを拾うと、よちよち歩きで一成の元へとやってくる。
「おにい」
鈴子が涙でぐちょぐちょの顔に無邪気な笑顔を浮かべ、拾った丸い物体を一成に差し出した。
その瞬間、鈴子だけが色を取り戻して見えた。
丸い物体は色鮮やかな緑色のライムの果実だった。落ちた衝撃で立ち上がった爽やかな芳香が鼻をくすぐる。
耳も目も鼻も、みるみる感覚が戻ってきた。
ーーとにかく、鈴子を守らなくちゃ。
何をすべきかわからなかった一成が明確に見つけた使命。
一成の止まった時間が動き出したのだ。