ライム〜あの日の先へ

ーー結婚してお母さん、か。そうだよね、普通そう思うよね。

子供のことも結婚のこともこれ以上深入りされてはマズイ。

鈴子は懸命に頭を働かせる。うまくこの場を収める辻褄が合う言葉を探す。
だがなにか言わなくてはと思えば思うほどに言葉が見つからない。


「お知り合いだったの？」


なんともいえない空気を変えてくれたのは、ハルトの母が零次に尋ねたそんな言葉だった。

「あぁ、親友の妹。まさかハルトの先生だったなんて、すごい偶然」


ーー本当。運命のいたずらってやつは憎らしい。

憎らしいけれど、零次が顔を見るなり鈴子を思い出してくれたことは、やっぱりどうしようもなくうれしくて。