ライム〜あの日の先へ
「君のことは覚えているよ。小学校の運動会の時に鈴子に八百長を持ちかけて、断られたら突き飛ばして怪我させた子だ。
あの頃からちっとも変わってないんだな」

体格のいい零次が怒りに満ちた顔で睨みつけると、さすがの日菜もたじろいでいる。

「え?あなた、誰?」

「君は一方的に鈴子を非難しているけれど。
今の鈴子のことを一番よく知っている人たちの意見を聞いてみないか?
みんなは、鈴子先生にいなくなってほしいかい?」

零次は日菜の質問には答えず、校舎内に向かって問いかけた。

零次は気づいていたのだ。子どもたちが心配そうにこちらをずっと見ていることに。
零次の声かけに校舎に残っていた子どもたちがわらわらと集まってきた。そして凛と同じように鈴子を守るように日菜の前に立つ。

たくさんの小さな背中が鈴子を守ろうとしていた。

鈴子はひどく嬉しかった。この仕事をしていて本当によかったと思ってしまう。
だが、喜んでばかりもいられない。子どもたちに危険が及ばないように警戒した。

「な、なに?ちょっと、どきなさい」

「ヴィラン!ヴィラン!ゲラッ!」

子どもたちが日菜に向かって口々にヴィランと叫ぶ。だが日菜にはヴィランの意味がわからないようだ。
ゲラッというのはget out(出ていけ)のことだろう。

「ヴィラン……?」
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