ライム〜あの日の先へ
「さっきから何?あなた、偉そうに……」

「私は一条琴羽。このプリスクールの創業者です。それとこちらは五嶋零次さん。山崎さんのご主人が勤めている商社の代表取締役よ」
「どうも」

紹介された零次は小さく首をかしげた。

「え……?う、嘘でしょ?五嶋?一条?こんな所に……え?」

日菜は慌ててスマホを取り出し、二人の名前を検索する。出てきた画像と目の前の零次と琴羽を交互に何度も見ている。


「さて、琴羽、どうする」
「そうね、鈴子先生はお嬢さんにここで社会性を学べると、おっしゃってくださっているのに。お母様が自分の大事な子どもを安心して預けられないというなら、仕方ないわね。
迷惑行為に関して訴えてもいいし、ハルトに対する傷害罪もあるし」
「子どもや妻が訴えられるのなら、社会的信用問題だな。ご主人にも責任を負ってもらうことにもなるだろう。
覚悟するんだな」

日菜の顔が凍りついた。
零次と琴羽が本気でかかればひとたまりもなかった。


「お騒がせをしました。もし、今回の件でご意見がございましたら、私がうかがいます。なんでもおっしゃってください」

周囲にいた保護者たちに琴羽が深々とお辞儀をした。すると、パチパチと拍手が起こる。一件落着だ。


「みんな、ありがとう。大好き」
「すずこせんせい!わたしもだいすき!やめないで」
「ありがとう。怖い思いさせてごめんね」

鈴子はしゃがみこんで足元で守ってくれた子どもたちに笑って見せる。子どもたちは鈴子に抱きついて大喜びだ。
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