ライム〜あの日の先へ
「凛、何があったの?」
「やだ」
「やだじゃわかんないよ?」
「やだ」
「じゃあ、こうだ!」

凛が何で機嫌が悪くなったのかはわからない。だが今日は朝から零次と食事に行くことを楽しみにしていた。その気持ちが変わるとは思えない。

ーーこんなときは笑えばいい。

鈴子は凛の脇腹をコチョコチョくすぐった。

「きゃあ、ママ、くすぐったい!やめて、アハハハ!せき、おせきがでちゃうよ!」
「ママは、コチョコチョ虫さんです。笑わせちゃうぞ」

凛が笑った。その笑顔を見てから鈴子はかたわらの零次の肩のあたりをくすぐった。

「零次くんも、くすぐっちゃうぞ」
「りんも!れいじくん、コチョコチョするぞぉ」

すっかり機嫌をよくした凛まで、零次の足をくすぐる。

「アハハハ、くすぐったいよ!」

笑い合う三人。

楽しそうな笑い声に遠くから見まもっていた琴羽もホッと安堵した。


< 213 / 231 >

この作品をシェア

pagetop