ライム〜あの日の先へ
「さ、先生、行って。お大事に」

「……はい。ありがとうございました」

鈴子は逃げるようにして病院内に入った。



零次くんは、意中の女性を射止めて夢を叶えたんだ。

そっか。

私の恋は、私だけのものだった。今までも、そしてこれからも、ずっと。

涙がポロポロと溢れてくる。
時間外で患者のいない病院の廊下。看護師に座って待つように指示された椅子に腰掛け、鈴子はタオルで顔を覆った。

止まらない涙を止める方法が知りたい。
いくら泣いたって何も変わらないのに、なぜ泣いてしまうんだろう。


ーー凛。ごめん。
やっぱり、凛のパパはいない。
この世のどこにも、いないの……。




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